2010.11.18 (23:50)
POSTED BY ねこやま
夏祭り


8月11日(土)
 
花火
 
 歓声が広がる。
 鮮やかな花火の色に照らされて、大勢の見物客が、みんな笑顔になっている。
 きみの横顔。
 
  ああ、きれいだな
 
 ぼくは、ほんとうに、そうおもう。
 
  そうだった──
 
 初めて出会ったころ、ぼくは、きみのことを見るたびに、いつもこんなきもちになっていたんだ。
 ぼくはすこしうしろに下がって、花火を、ではなく、花火を見上げるきみの様子を、ずっと、ながめていた。
 たくさんのことをおもいだしながら。
 
 
 花火が終わって、ひとびとが散りはじめる。
 夜店の賑わいは、まだ続いている。
 ざわざわとした、不思議な高揚感のある雑踏の中にいたら、初めてふたりで歩いた、あの夜の、あの街並みの中にいる感覚が蘇ってきた。
 季節はぜんぜんちがうけれど、はしゃいだ雰囲気の人工の灯かりと、行き交うひとびとの笑顔が、あの夜とおなじだ。
 
 「金魚すくい、やってるね」
 「寄っていこうか」
 
 ぼくは、どうしても、今夜の記念になにかが欲しくなっていた。
 ぼくらは新居に池を作っていた。
 
  そうだ、この金魚たちを、今夜の記念に迎え入れよう──
 
 そうしよう。ふたりの池に放そう。
 金魚を連れて帰ろう。
 ぼくらの池に。

 

 

8月12日(日)
 
泳いだ
 
 睡蓮のあいだを縫って泳ぎまわる金魚たち。
 昨夜のきもちが形となって残っているようで、眺めているうち、ぼくはつい、笑い顔になってしまう。
 最近、つまらない言い争いをすることが増えてるから。
 だから、昨夜のようなきぶんが、単純にうれしい。とても、うれしい。
 
 この金魚たちを見るたびに、ぼくはおもいだすだろう。
 出会ったころの、あの夜の出来事を。そして、昨夜のきもちを。
 
  大切にしよう、 育てていこう──
 
 距離が近くなったぶん、照れくさくて、もう言葉にすることはないけれど。
 金魚たちを見ながら、こころの中でぼくは言う。
 
  すきだよ。
  きみがすきだよ。
 
 「元気でいてな」
 金魚たちへ、声に出してそう言った。

 

 
 
 
 

8月27日(水)
 
死んだ
 

(2007.08.27)

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